開設20周年特別寄稿 バス趣味について考える
はじめに
 
 サイトを開設して20年、バスに興味を持ち始めてからは50年近くとなりますが、その間、特に興味を持ち始めた初めの数年間は岩手のバスにとっては激動の時代となりました。そういった中で地元のバスを見つめ続け、インターネットに接続した2000年からはバス趣味への自分自身の環境も大きく変わり始めました。
 その後、それなら自ら発信もしようと考えていくようになり、構想・準備期間経てサイトを立ち上げたのが2003年5月1日。その前後の20数年間にかけては実際に行動しながらバス趣味に対する考え方も少しづつ、変わるようにもになりました。
 
 開設20周年を機に、この20数年間の中で色々な場所で人と接しながら見て、バス趣味について感じてきたことをこのコーナーに纏めてみました。考え方はそれぞれあるとは思いますが、その中のひとつのとして、皆様の今後の趣味活動への参考になればと思い、自ら寄稿してみることとしてみました。
 
1.周囲に気を配る

 

1-1.多くの人・車が行き交う場所では…

  

サイト開設以前でかなり前のことなので書きますが、ある駅前のバスプールで私と同じくカメラを持ち、もう片方の手には火のついたタバコを持っているバスファンと思われる人が、到着した1台のバスに向かって突然大きな声を発しながら、タバコを「ポイ捨て」し、駆け寄っていく様子を目撃したことがあります。このような行為は周囲から奇異な目で見られるばかりでなく、当人の気持ちと視界がバスにしか向いていないため当人自身が危険な状況を誘発してしまい、事故が起きたらバス事業者・乗客・施設管理者・警察だけでなく、無関係な通行人や一般車輌にまで多大な迷惑をかけてしまうことになります。しかも火のついたままのタバコを「ポイ捨て」するのは、周囲にとっては言うまでもなく危険です。

お目当てのバスが来て思わず駆け寄りたくなる気持ちは同じ趣味人としてわからなくはないですが、一旦その気持ちを落ち付かせて常に周囲と先々の状況を確認しながら慌てずに行動したいものです。

 

1-2.車庫の構内では

 

バス営業所で撮影の許可を頂き構内へ立ち入った際は当然のことですが、バスの出入りには充分気を付けなければなりません。近くでバスが動いていたら、安全な場所へ素早く退避し運転手さんに安全であることがわかる状況を伝え、軽く会釈すればお互いの信頼感にもつながると思います。

 

1-3.コミュニケーションについて

 

また、バス車内や回転場、及び車庫内で乗務員さんと話に花が咲くこともあると思いますが、特に車輌の話題などで一方的にならないように気を付けることは勿論、「ほどほどに」することが必要だと考えます。乗務員さんとて車種に興味のある方・詳しい方とは限りませんし、忙しい中の貴重な休憩時間でもあり、時間が限られている中で仕事をしている訳ですから、その業務や安全面に支障が出てしまったら大変です。特にバス車内で他にも乗客がいた場合は後から苦情として持ち込まれるかもわかりません。コミュニケーション自体に問題は無いものの、常に周囲と先々を見据えながら「空気を読みながら行動する」ことが大切な事だと、私は感じています。

 

2.感謝の気持ちと礼を失しない

 

2-1.車庫に訪問した際は…

  

以前あるバス営業所で撮影の許可を頂いた際、「終わったらもう一度ココに立ち寄ってください」と言われて思わず「撮影が終わっても何も言わず黙って立ち去ってしまうバスファンがいたのか」と考えてしまったことがあります。挨拶をするのは社会人として(社会人ではなくとも)は当たり前なので、撮影を終えた際、私は必ずお礼を述べてから車庫を後にしていますが、もしかしたら、それすら出来ていないバスファンがいたのかもしれません。挨拶をするということは同時に、何事もなく撮影を終えたという報告にもなるので、これもお互いの安心感・信頼感にもつながるはずです。

 

2-2.趣味活動が出来ることに感謝の気持ちを…

 

 バスは我々趣味者のものではなく、地域の足を守るという使命を背負って運行されているものですし、事業者の皆さんは生活をかけて(どんな仕事もそうですが)その運行に従事しています。そのような中で趣味活動が許可頂けることに我々は常に感謝の気持ちを忘れずに持たなければならないと思います。

 

2-3.挨拶をしよう

 

車庫内では乗務員や職員の方々とすれ違うことも多々ありますが、その際は「お邪魔しています」「こんにちは」と率先して声を掛けるようにしましょう。そうすることで「どーも!」「気をつけてね」と返事が返ってきますし、暗い人とか怪しい行動をしていると誤解されるようなことも少なくなると思います。

 

3.大人のバスファンであること

 

3-1.乗務員はバス趣味の理解者とは限らない

 

これも相当前のことなので書きますが、私自身がバスに乗車しある停留場に着いてから、下車する際にバスの写真を撮らせて頂きたいことを乗務員さんにお願いしたところ、我々バス趣味者に対し快く思っていないことを言われてしまいました。

想定していなかった返答に正直ショックでしたが、ココはバスを撮りたい気持ちをグッと堪え「わかりました」とだけ返し、カメラをしまうとともになぜこのようになったのかを帰りのバスの中で考え込みました。本当にバス趣味者全体の事として言われてしまったのか?自分の言動・態度には問題が無かったのだろうか?「今までは承諾していただけたので、今回も勿論OKですよね?」みたいな気持ちが無意識に伝わってしまったのか?ともしこのような状況になった場合、「俺個人は何も迷惑はかけていない」「こっちは客としても乗っているんだ」と思う方もいるかもわかりませんが、それを口に出してしまったらもっての他です。

その停留場では「撮ってほしくない」とまでは言われなかったものの、だからといって撮影を始めたりしたら、その乗務員さんの我々バスファンに対する印象はますます悪くなっていたに違いなかったでしょう。

 

3-2.自身を振り返る機会と捉える

  

上記にように、撮影を快諾頂けた。とは言えない状況の場合「今までは、誰々は承諾してくれた」とか、理由を詮索するようなことを聞いたりするべきではないと考えます。

当然、その理由があってのことですし、我々バスファン以外のことでも他に何かやむを得ない事情があるのかもわかりません。先ほどの自分自身もそうであったように、せっかく来たのにと残念な気持ちになるでしょうが、時には諦める・引き返す勇気も必要です。その上で、今までの自身の行動・態度を振り返ってみて考える。改める必要がわかれば、次回から実践する。自身にとっても良い機会と捉えた方がいいかもしれません。

 

4.バスファンとして出来ること

 

4-1.少しずつ出来ることから

  

私自身、撮影で車庫・営業所へお邪魔する際には不便な場所でない限り、極力バスを使うようにしています。但し車庫・営業所によっては、バスの出入りは全て回送で入出庫系統の路線がない、あっても便数が僅かしかなく、しかも土・日・祝日は運行されないという所(前述の不便な場所)もありますので一概には言えませんが、岩手県内の車庫を例として挙げれば、盛岡地区では幹線系統で車庫を発着拠点にしている、または途中経路で通過する(巣子車庫など)路線も多く、昨今の事情で便数は若干減ってはいるものの、バスでの移動にはあまり問題無いものと考えます。車庫を発着する本数があまり多くはなく、時間を持て余してしまった場合でも、車庫内での滞在時間は最小限に済ませ、その代わりに周囲を散策してみるのも良い気分転換になりますし、健康のためにもイイと思います。

また、私は車庫にお邪魔して挨拶する際、ICカードへのチャージやバスカードの購入、それらが無ければ回数券・乗車券等を購入しています。そうすることによってお互いに感謝の気持ちを持って「ありがとうございます」と言葉を交わすことができます。とにかく「好きだからには、出来るだけ乗る」。バス趣味にあたっての基本はコレかなと思います。

 

4-2.バスに乗れなくても出来ることはある

 

バスは好きだし乗りたいけど、近くには路線無いとか、日々忙しくてバスに乗るための時間がつくれない、ということもそれぞれあるかとは思います。バスファンとしては、やはりバスに乗ってお金を落とすことがベストだとは思いますが、それが難しくとも日常の生活の中で好きなバスのために出来ることはある、と考えます。

一例を挙げれば、交差点で路線バスが右折待ちをしている際に、対向車線の交通量が多くてなかなか右折できず、右折レーンがない場合は渋滞が発生してしまう、ということがあります。自分が車を運転している際、そういう状況に出くわすことがありますが、走行中の自分の車の前方で路線バスが右折待ちをしていたら、軽く二度ほどヘッドランプをパッシングしてバスに道を譲る意思を伝えています。

道を譲る相手が一般車輌だったりすると、パッシングの意味が伝わらずなかなか右折しなかったり、譲られても何事もなかったかのように平然と行ってしまう車も中にはありますが、バスであればそこはさすがにプロ、大きく挙手をして、きちんとお礼の意思が伝わり、こちらも会釈をして返します。

 別のケース、交差点での右折待ちが一般車輌でそこから後ろの列が動かなくなったケースで、右折待ちの2後ろが路線バス(直進)だったのですが、同様に右折待ちの一般車輌に道を譲って車の列が動き出した際も、路線バスの運転手さんからこちらにお礼の挙手がありました。このように運転の「プロ」は周囲の状況をよく見て、こちらの意図を感じとっているんだな、と思った瞬間でもありました。

 但し、今回のように交差点で右折待ちに譲る場合、バイク等のすり抜けで起こりうる「サンキュー事故」につながる危険も考えられるため、「譲ろう」と判断した短い時間の間に周囲の交通状況を把握することも必要かと思います。

 この事自体は大したことではなく、考えると出来ることは他にもあるとは思いますが、バス事業者は昨今の人員不足もあってか、気持ちにゆとりのない状況になっているのかもしれません。そのような中でこちらがバスに対してバスファンだからこそ出来ることを実践し、安全運行に少しでも寄与できれば、と思います。
2023.5.1 開設
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